筋彫り…それはタトゥーを彫る上で最も大切、かつ刺青師一年生たちが最初にぶち当たる難関。

むずいよなー？わかるわー！おれも最初に筋彫りのコツを掴むまで三年くらいかかったわ。

筋彫りがめちゃくちゃになると後から修正効かねーし、コツがわかんねーとすぐ針はブレるし、ノズルからインクが飛び出してステンシル消えるし。

それをビビってると手が震えるだろ？で、筋彫りはブレブレ、針が深く入りすぎてぷちゃってなってさ？

わかるわー笑笑大変だよな？コツ知りてーよな？

教えねーよ、バーカ笑笑

って誰も教えてくんないだろ？

そんなもんだよ。

それでも彫師にどうしてもなりたくて

色んなマシンやインクを手当たり次第に試して

マシンを何台もぶっ壊すまで研究して

てめーの足が無残な残骸になるまで彫って

それでも上手くなれなくて

頭がおかしくなるくらい悩んで”自分には才能がないんじゃないか…”って自信も失って

それでも頼る人もいなくて落ち込んで…ってなってない？

いいねー！悩め！落ち込め！

そんで彫師になるのなんてやめて公務員になれ！

…って、そんじゃかわいそうだよな？

左だよ、左手。ボクシングもそうだろ？

左を制するものは筋彫りを制すんだよ。

上手い彫師は左肩がめちゃ凝ってる

上手い彫師の見極め方=左肩のコリッコリだね。

左手の使い方まではめんどくせーから教えてやんない。そのかわりになんで彫り方を教えてやんない意地悪をするかは教えてやろう。

下手なバカがタトゥーマシンを持つとそれは人を傷つける凶器になるからだ。

さらにバカだと…

客としてウチに来てタトゥーを完成できなかった挙句、勝手におれの弟子だと世間様に名乗って、おれからタトゥーを習ってきたと自称して未成年の子にめちゃくちゃなタトゥーを彫りつけて傷害事件化しておれんとこに警察から電話がかかってきたりするからだ。

世の刺青界の諸先輩達はみんな意地悪をしたくて教えないわけじゃない。おれもきみもタトゥーが大好きすぎてどうしても彫師になりたくて仕方ない同類でしょ？

彫師になりたい奴ら・でも上手くいかない奴らの気持ちなんかおれらが一番わかるよ。

でも、だからってどんな奴かもわからない奴におれらがハンパな彫り方教えて、それで誰かに無理やりタトゥー彫ったら？

その責任は誰が？

安いペン型マシンをネットで買って

何が入ってるかもわからねー謎のインクを刺して

消毒方法も知らずに“私はフリースタイルでがんばってます！”ってSNSで客を集めてる自称彫師んとこ行って

安いからってそこで彫った無残なタトゥーを直してくれっておれんとこ来るの？

だからマッサージのババアに”左肩を三時間揉め！”とおれは言い放つんだ。ババアは嫌そうな顔をしているよ。

+++刺青弟子の成り方 (絶対にウチには来るな)

おれには三人の大恩人と刺青師匠がいます。

一人目はステファン・フィッチャー師匠。ドイツのタトゥーマシンビルダーにしてタトゥーマシンブランドBavarian Custom Irons社のボス。

http://www.bavariancustomirons.com/

とある縁があっていきなりドイツに押し掛けて、初対面の空港で”おまえこのまま好きなだけドイツにいろ。ウチに住め。タトゥーの事ならおれの弟子達がなんでも教えてやる”って言われて、馬鹿正直にそのまま居候してタトゥーマシン作りから習ってきた。

二人目は姫路龍景師匠。

ドイツ刺青留学から帰国した瞬間に”伊彫くん姫路に遊びに来なよ！ドイツの事知りたいし！”って言ってくれたから、馬鹿正直に即姫路に遊びに行って、そのまま仲良くなって、死ぬほど酒を飲まされて虐められ、針の事から教えてくれた。

姫路 初代龍景

三人目は大阪彫つな師匠。

龍師匠に”伊彫くんにどうしても会わせたい人がいる”ってアメ村に連れていかれ、そのまま謎の酒池肉林天国の地獄歓待を受け、おれから弟子にしてくださいと願い出た。

大阪 彫つな

この三人におれが教えてくださいって最初に聞いたのは

”筋彫りのやり方がわかりません！”でした。

そしてその習い方は”自分のカラダを師匠に彫ってもらう”+”その一部始終を録画”+”師匠が仕事してる様子を録画→何百回も観る→てめーのカラダに自彫でやってみる”

この繰り返しだけです。

手取り足取りなんか一度もしてもらった事はないよ。むしろ、たぶんほぼ質問なんかした事ない。全部見て覚えました(=仕事を見せてくれた・見取り稽古だね)

なぜこの三人がおれにそれをしてくれたか？

わからん！

でも、せめておれが出来ること…掃除しまくった！言われなくてもてめーで勝手に掃除してた！(+酒飲めないのにがんばって飲んだ)